家を建てる時の建築制限に注意!【マイホーム土地探しの基礎知識】

土地の選び方には、個々のライフスタイルによって大きく異なる要素が存在します。多くの方はおおよその希望エリアが決まっているかと思いますが、地域ごとに様々な建築制限が設けられています。

例を挙げると、建築する地域によって、建物の大きさや高さなどが制限されてしまいます。
これらの制限は、用途地域として大まかに区分けされ、同じ用途地域内でもさらに詳細な制限が設けられています。

時には、これらの制限によって望んだ建物を建てることが難しい場合や、制限に対応するために建築費が増える可能性も考えられます。

この記事では、マイホーム建築の計画において最低限必要な建築制限に関する知識を解説しています。

目次

用途地域の注意点

「用途地域」とは、大きく分けると「住居系」「商業系」「工業系」の3つに分類されます。

詳細に分類すると、全部で13種類の用途地域が存在しますが、住宅建築ができない地域は工場専用地域のみです。

「自分の理想の場所で、予算内で、条件を満たす家を建てられれば、それで十分なのでは?」と考える方もいるでしょう。基本的にはその意見に賛成ですが、将来的に同じ用途地域内でどのような建物が建てられる可能性があるのか、把握しておいた方が良いでしょう。

用途地域には、建築物の種類や規模、容積率、建蔽率、高さなどの制限がそれぞれ設けられています。ただし、同じ用途地域でも建蔽率や容積率は地域によって異なることに注意が必要です。

下記の表に用途地域の特徴をまとめておきます。

用途地域住宅建築絶対高さの制限特徴
第一種低層住居専用地域10m
12m
住宅街で最大3階建て可能。
飲食店やコンビニは建築不可。
第二種低層住居専用地域10m
12m
住宅街で最大3階建て可能。
小規模な飲食店やコンビニは建築可。
第一種中高層住居専用地域なし住宅やマンション4階建て以上も可能。
中型のスーパー等も建築可。
第二種中高層住居専用地域なし住宅やマンション4階建て以上も可能。
中型のスーパー等も建築可。
第一種住居地域なし大規模マンションや商業施設も建築可能。
第二種住居地域なし大規模マンションや商業施設も建築可能。
パチンコ店やカラオケBOXも建築可能。
準住居地域なし倉庫や自動車修理工場も建築可能。
小規模な劇場や映画館も建築可能。
田園住居地域10m
12m
住宅やマンションは最大で3階建て。
農業用の倉庫や施設の建築可能。
近隣商業地域なし大型の商業施設やショッピングモールも建築可能。
利便性は良いが少し賑やか。
商業地域なし大型の工場以外は、ほぼ建築可能。
利便性は大変よく賑やか。
準工業地域なし住宅やマンション、店舗や飲食店も建築可能。
小規模な工場は建築可能で騒音は気になる。
工業地域なし環境を悪化させるおそれがある工場の建築も可能。
工業専用地域×なし住宅は建築できない。

上記の表で説明している特徴は、用途制限の一部であり、さらに詳細を知りたい方はご自身で調査してみてください。用途地域やその他の建築制限は、各市区町村の役場にある都市計画課などで確認することができますし、インターネットで検索する事もできます。
インターネットで検索する場合は、「地域名+都市計画図」で検索すると該当する地域が多いでしょう。

マイホーム建築の目的で商業系の土地を購入する人はほとんどいないでしょう。商業用地の価格も高く、資金に余裕があるか自宅兼用で事業を始めるなどの理由がない限り、一般的には選択肢に含まれないと思われます。
ほとんどの人は、価格的なことも考慮すると住居系や準工業地域のエリアで土地を探すことになるでしょう。

自分が建てたマイホームの近くに新しい商業施設や飲食店ができることは、利便性の向上を期待する人もいるかもしれません。しかし、一方で、「大規模なマンションが建てられた」「飲食店ができて匂いが気になる」「工場ができて騒音がうるさい」「商業施設ができて交通渋滞が発生する」といった環境の変化によって、自分が気に入った状況が壊されることを望まないと考える人も多いでしょう。

10年や20年といった時間の経過とともに、環境は必ず変化していきます。その変化がどのようなものか、そして自分がそれをどのように受け止めるかを考え、検討する必要があります。

土地エリアを決める注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。

防火地域と準防火地域の注意点

市街地では建築物が密集しているため、火災が発生した場合、延焼や飛び火によって火災が広がる危険性があります。

そのため、建物の大きさによって基準は異なりますが、該当の地域では耐火建築物や準耐火建築物、または一定の防火技術基準を満たす建物にする必要があります。

防火地域では、建蔽率が緩和される場合もありますが、建物の材料を燃えにくい基準を満たすものに変更する必要があります。そのため、場合によっては建築費用も増えることになります。
また、例えば玄関ドアやサッシなども防火仕様にする必要があり、防火仕様の商品に限られるためデザインやカラーなど選択肢が制限されるというデメリットもあります。

建蔽率と容積率の注意点

建蔽率と容積率は、地域と用途地域によって定められている建築制限です。

建蔽率

建蔽率は、敷地の面積に対して建築できる建築面積の割合を指しています。

100坪の敷地に対して建蔽率が50%の場合、建築できる建築面積は50坪までとなります。

住居系の用途地域内では、30%~80%の範囲で設定されています。
また、特定の要件に該当する場合は、建蔽率が緩和されるケースがあります。

① 防火地域内に建築する耐火建築物は10%緩和  (※ ただし、建蔽率の最大限度は80%)
② 角地は10%緩和

容積率

容積率は、敷地の面積に対して建築できる延べ床面積(1階と2階、もしくは3階も)の割合を指しています。

100坪の敷地に対して容積率が100%の場合、建築できる延べ床面積は100坪までとなります。
しかし、容積率は前面道路の幅員による制限を受けるケースが多いので、注意が必要です。

前面道路の幅員が12m未満である場合は、容積率が下がるケースがあります。
不動産会社や施工会社、もしくは地域の市区町村への確認が必要です。
また、角地などの二方向道路の場合、広い方の道路幅員を基準として考えます。

低層住居専用地域内と田園住居地域内における外壁後退距離の注意点

第一種、第二種低層住居専用地域内、田園住居地域内では、外壁の後退距離の制限が定められる場合が多いでしょう。

敷地の境界線から建物の外壁まで、1.5mもしくは1メートル離さなければなりません。

建物の高さ制限の注意点

建物の高さは、道路や建築物の日照や採光、通風の確保などの観点から、地域によりさまざまな制限が設けられていますので、下記に紹介します。

低層住居専用地域と田園住居地域の絶対高さの制限

第一種、第二種低層住居専用地域、田園住居地域では、建物の高さは10mもしくは12mと地域により必ず制限されています。

施工会社により建物の高さは異なりますので、3階建て以上の建物を検討する際には確認が必要です。
しかし、後述に解説致しますが他の斜線制限などにより別途制限を受けるケースが多いので注意が必要です。

北側斜線制限

北側斜線制限は、建築する敷地に対して北側の方角にのみ適用される斜線制限です。
制限の目的は、北側の道路や隣地に対して日照や採光、通風を確保するために制限されています。
対象の用途地域は下記になります。

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居戦闘地域

建築する土地に対して北側にある隣地は、隣地から見ると南側になります。
敷地のギリギリまで高さのある建物を建てられると、日当たりが悪くなることがわかります。

また、低層住居専用地域と中高層住居専用地域とでは、制限の範囲が異なります。

低層住居専用地域では、2階建てでも制限に引っかかるケースが多いので注意が必要です。
具体的な対処法は以下になります。

・2階建ての場合、北側の境界線から2m~2.5mの距離を設けて建物の配置をする。
・斜線に触れる部分は、1階のみにする。
・軒先の形状を変える。

上記のような対策方法がありますので、対象地域の場合は施工会社へ相談しましょう。

中高層住居専用地域では、3階建てまでの建物であれば実質的に制限を受けるケースはほとんどないでしょう。

道路斜線制限

道路斜線制限は、敷地に接道している道路や、道路に接する他の建物に対して、日照や採光、通風を確保するための制限です。
また、全ての用途地域が対象となり、用途地域によって制限の範囲が変わります。
道路斜線制限は、敷地に接道している道路幅員によって、道路側の敷地に対して制限がかかる場合があります。

住居系の用途地域を対象とした、具体的な例は以下になります。

道路幅員が4m~6mの場合は制限の対象になる可能性があります。
敷地に余裕がなく、道路側の敷地境界線より建物位置を後退させることが難しい場合は注意が必要です。
対処法は、北側斜線と同じような方法となります。

隣地斜線制限

隣地斜線制限は、低層住居専用地域と田園住居地域を除くすべての用途地域が対象となります。
しかし、20m以上の建物に対して制限が対象となりますので、一般的な住宅建築に該当することはないでしょう。

日影規制

日影規制は、建物の日影が敷地の外に一定時間以上生じさせないよう建築物の形態を規制するものです。
対象の用途地域は以下になりますが、対象の用途地域内に地方公共団体の条例で指定する規制となるため、対象なのか対象外なのか確認が必要です。

対象の用途地域対象の要件
第一種低層住居専用地域軒の高さが7mを超える建築物
または
地階を除く階数が3以上の建物
第二種低層住居専用地域
田園住居地域
第一種中高層住居専用地域高さが10mを超える建築物
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
準工業地域

複雑でわかりづらい規制への対処

これまで、建物の高さに関する規制について説明してきました。地域によって規制が異なるため、建築に関する知識がない一般の方にとっては少し難しいかもしれませんが、敷地内には建設可能な空間とできない空間が必ず存在することを理解いただけたかと思います。

土地を探す段階では、建物の大まかな規模がイメージできるはずです。2階建てなのか、3階建てなのか、その程度は決まっているでしょう。建物の高さや仕様は施工会社によって異なります。

気になる土地があれば、希望の階数でどの範囲まで建物を建築できるのか、まずは積極的に施工会社の営業担当者に確認することをおすすめします。

土地選びの注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。

本格的に土地を探し出す時には、施工会社の候補も決めておく必要があります。
以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

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